看護師の夜勤

看護師の夜勤とは|手当の実額と回数の上限、割に合うかの判断軸

コロ助

夜勤を何年も続けていると、これが自分にとって割に合っているのか分からなくなります。手当はついている、けれど生活は削られている。この記事は、その判断に必要な数字と決まりを一箇所に集めたものです。

結論から言えば、夜勤は「時間を売る働き方」であって、あなたの市場価値が上がる働き方ではありません。以下では手当の実額、回数の上限を決めている仕組み、やめた場合の差の順に、根拠を示しながら整理します。

夜勤は時間を売る働き方であり、値札が上がる働き方ではない

編集部の結論は一つです。夜勤で増えるのは手当であって、あなたの市場価値そのものではありません。

根拠は賃金の内訳の動きにあります。日本看護協会の調査を約12年前の同種調査と比べると、病院勤務の看護師の基本給月額は5,868円(約2.3%)しか増えていません。一方で税込給与総額は29,936円(約8.5%)増えています(出典:日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」2025年6月24日公表、および2012年の同種調査。増加額は編集部の算出)。

つまりこの約12年で上がってきたのは手当であり、基本給ではありません。手当は働き方を変えれば消えます。基本給は職場を変えても、あなたの経験として値札に乗ります。夜勤を何年続けても、手当の分だけ収入が増えるだけで、あなたの値札は動きません。

だからといって「夜勤をやめるべきだ」という話ではありません。この記事で示すのは、続けるか減らすかを自分で決めるための材料です。判断に必要なのは次の3つです。

  • 手当が実際にいくらで、それが今後増えるのかどうか
  • あなたの夜勤の回数と時間を、誰がどう決めているのか
  • 夜勤を減らした場合、収入がどれだけ変わるのか
看護師の夜勤で増えるのは手当であり基本給はほとんど動かないことを示す図解

看護師の夜勤とは(2交代制・3交代制・夜勤専従)

夜勤とは、入院患者がいる病棟などで夜間帯に行う勤務のことです。24時間の看護体制を維持するために、日勤と交代で組まれます。

勤務の組み方は大きく2つあります。2交代制は日勤と夜勤の2つで1日を回す形で、1回の夜勤が長時間になります。3交代制は日勤・準夜勤・深夜勤の3つに分ける形で、1回あたりは短くなりますが勤務の切り替わりが増えます。

このほかに、夜勤だけを担当する夜勤専従という働き方があります。日本看護協会の調査では、夜勤専従者がいる施設は41.7%でした(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。

なお、2交代制と3交代制のどちらが多数派かについては、編集部が原典で確認できた数値がないため本記事では書きません。職場の勤務形態は、求人票または就業規則で個別に確認してください。

夜勤手当は1回いくらか

2交代制の夜勤手当は1回あたり11,815円、3交代制は準夜勤4,567円・深夜勤5,715円が平均です(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。

この金額をどう受け取るかは、月の回数によって変わります。2交代制で月4回なら約47,000円、月5回なら約59,000円という計算になります(編集部の算出)。

ただし、ここに重要な事実が1つあります。夜勤の回数が一定を超えた場合の増額・加算制度は、69.6%の施設で「ない」と回答されています(出典:同調査)。つまり回数を増やしても、1回あたりの単価は基本的に上がりません。

夜勤専従についても同様です。夜勤専従者がいる施設のうち、特別手当が「ある」のは14.2%(平均25,000円)にとどまります(出典:同調査)。

夜勤の回数と時間を決めているのは、職場ではなく施設基準

ここが多くの解説記事で抜けている論点です。あなたの夜勤の回数は、上司の裁量だけで決まっているわけではありません。

入院基本料を算定する病棟には、次の基準がかかっています。

夜勤を行う看護職員の一人当たりの月平均夜勤時間数が七十二時間以下であること。
(基本診療料の施設基準等〔平成20年3月5日厚生労働省告示第62号〕第五「病院の入院基本料の施設基準等」二(2)。2026年9月5日に原典で確認)

これがいわゆる72時間ルールです。病棟ごとに、夜勤をする看護職員1人あたりの月平均夜勤時間数を72時間以下に収めることが求められます。

ここで区別しておきたいことがあります。72時間ルールは労働基準法が定めた労働時間の上限ではなく、診療報酬を算定するための施設基準です。 守るべき相手は労働基準監督署ではなく、診療報酬上の要件です。個人の上限ではなく病棟の平均で判定される点も、労働法の規制とは考え方が異なります。

つまりあなたの夜勤回数は、病棟に何人の夜勤要員がいるかで決まります。人が減れば1人あたりの回数は増え、平均が72時間に近づけば病棟として調整せざるを得なくなります。「夜勤を減らしてほしい」という相談が通りにくい職場があるのは、この構造が背景にあります。

千葉県では、284病院のうち132病院が急性期系の入院料を届け出ている

この施設基準がどう分布しているかを、編集部が千葉県について集計しました。千葉県の病院名簿(2026年4月1日現在)284病院に、関東信越厚生局の施設基準届出受理状況(2026年7月1日現在)を施設名と所在地で結合した結果です。

届け出ている入院料の区分 千葉県内の病院数
急性期一般入院料1 13
急性期一般入院料2 13
急性期一般入院料3 4
急性期一般入院料4 40
急性期一般入院料5 13
急性期一般入院料6(経過措置を含む) 10
急性期病院A一般入院料 31
急性期病院B一般入院料 8
小計 132
上記の届出なし・照合できず 152

入院料の区分によって、求められる看護職員の配置は異なります。同じ「急性期の病院」でも、区分が違えば夜勤帯に置かれる人数の前提が変わります。 千葉県で最も多いのは急性期一般入院料4の40病院で、急性期一般入院料1は13病院にとどまりました。

なお「上記の届出なし・照合できず」の152病院は、届出をしていない病院と、名簿と厚生局データの時点差で結合できなかった病院の両方を含みます。届出がないと確定したわけではありません。

千葉県の病院における急性期系入院料の届出区分別の病院数を示す棒グラフ

夜勤に伴う、手当がつかない時間

夜勤の負担は勤務時間の中だけで終わりません。日本看護協会の調査には、時間外労働の実態を3段階で示したデータがあります。

  • 病院勤務者が実際に働いた時間外労働:平均15.5時間
  • そのうち時間外勤務を申請した時間数:9.3時間
  • 実際に時間外手当が支払われた時間数:9.1時間

(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)

差し引き6.4時間が無給になっています。内訳を見ると、支払われなかった6.4時間のうち6.2時間は申請の段階で消えており、申請したのに支払われなかったのは0.2時間です。

この構造は重要です。問題は「申請しても払われない」ことではなく、「そもそも申請されていない」ことのほうにあります。 始業前の情報収集、終業後の記録、委員会や研修が、申請の対象として扱われていない職場が少なくないと考えられます。

夜勤の割に合うかを考えるとき、手当の額だけを見ると判断を誤ります。手当がついている時間の外側に、月6時間前後の無給労働が乗っている可能性があります。

なお、休憩については労働基準法に最低ラインの定めがあります。

使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
(労働基準法34条1項。2026年9月5日に原典で確認)

夜勤をやめると、月の給与はどれだけ変わるのか

夜勤を減らす・やめるという判断をするなら、収入の差を先に把握しておく必要があります。就業先別の税込給与総額は次のとおりです。

就業先 平均税込給与総額(月額) 平均年齢
病院 382,093円 38.2歳
診療所 350,857円 43.8歳
介護系サービス 351,599円 48.9歳
訪問看護ステーション 347,181円 47.0歳

(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査。正規雇用フルタイム・非管理職・看護師の個人調査)

この「税込給与総額」は基本給と諸手当を合わせた月額であり、賞与を含みません。年収ではない点に注意してください。

病院と訪問看護ステーションの差は34,912円です。ただし訪問看護ステーションの回答者は平均年齢が約9歳高く、年齢構成が異なる集団を比べていることになります。単純に「夜勤をやめると月3万5千円下がる」と読み取ることはできません。

編集部の見方はこうです。この差の大部分は夜勤手当の有無で説明がつく範囲であり、月の夜勤4〜5回分とおおむね重なります。 夜勤をやめる判断は、この差を許容できるかどうかの判断とほぼ同じ意味を持ちます。

千葉県で夜勤を減らすという選択肢

千葉県で働いているなら、地域の事情も判断材料になります。

千葉県の就業看護師は52,318人で、人口10万人あたり837.0人です。全国平均は1,101.1人で、千葉県は47都道府県中45位でした(出典:千葉県「令和6年千葉県衛生統計年報(衛生行政)」2024年12月31日現在)。全国平均の76.0%にとどまります(編集部の算出)。

看護師が相対的に少ない県では、1人あたりの夜勤負担は重くなりやすい構造があります。夜勤を減らしたいという相談が通りにくい背景には、この人員の薄さもあります。

一方で、千葉県内には284の病院があり、開設者区分では医療法人が216病院と全体の76%を占めます(編集部が県の病院名簿から集計、2026年4月1日現在)。選択肢の数そのものは少なくありません。 夜勤のない働き方に移る場合、病院以外にクリニック・訪問看護・介護施設・健診機関という選択肢もあります。

よくある質問

看護師は夜勤でいくら稼げますか?

2交代制で1回11,815円、3交代制で準夜勤4,567円・深夜勤5,715円が平均です(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。2交代制で月4回なら約47,000円が目安になります(編集部の算出)。ただし回数を増やしても1回あたりの単価が上がる仕組みは、69.6%の施設で用意されていません。

看護師の夜勤は16時間ですか?

2交代制では1回の夜勤が長時間になりますが、具体的な勤務時間は職場ごとに異なります。編集部が確認した範囲では、全国の勤務時間帯を統一的に示した公的なデータは見当たりません。あなたの職場の実際の時間は、就業規則または勤務表で確認してください。

夜勤の72時間ルールとは何ですか?

入院基本料を算定する病棟で、夜勤をする看護職員1人あたりの月平均夜勤時間数を72時間以下に収めることを求める施設基準です(基本診療料の施設基準等〔平成20年3月5日厚生労働省告示第62号〕第五 二(2))。労働基準法の上限ではなく、診療報酬を算定するための要件であり、個人ではなく病棟の平均で判定されます。

看護師が夜勤なしで働ける職場はありますか?

あります。診療所・訪問看護ステーション・介護系サービス・健診機関などが該当します。月の税込給与総額は病院が382,093円、訪問看護ステーションが347,181円で、差は34,912円です(出典:前掲・2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査)。ただし回答者の平均年齢が異なるため、この差をそのまま「夜勤をやめた場合の減収額」と読むことはできません。

夜勤がある看護師の年収はいくらですか?

編集部が確認した範囲では、「夜勤あり」の看護師に限定した年収の公的データは見当たりません。日本看護協会の調査が公表しているのは月額の税込給与総額(病院382,093円)であり、これは賞与を含まないため年収ではありません。年収を知りたい場合は、月額と賞与を分けて確認する必要があります。

まとめ

  • 夜勤で増えるのは手当であり、基本給はこの約12年で5,868円(約2.3%)しか動いていません
  • 2交代制の夜勤手当は1回11,815円。回数を増やしても単価が上がる仕組みは69.6%の施設にありません
  • 夜勤の回数は上司の裁量だけでなく、月平均夜勤時間数72時間以下という施設基準が枠を作っています
  • 手当のつく時間の外側に、月6.4時間の無給労働が乗っている可能性があります
  • 病院と訪問看護ステーションの月額の差は34,912円ですが、年齢構成が異なるため単純な減収額ではありません

夜勤を続けるか減らすかに、正解はありません。編集部が勧めるのは、手当の額ではなく「基本給がいくらか」で職場を比べることです。手当は働き方を変えれば消えますが、基本給と経験は次の職場にも持っていけます。

いま転職する必要はありません。ただし、自分の値札が今いくらなのかは、動く前に知っておいて損はありません。

参考・出典

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